たぬきサマー

ミニマリストだけどコスメ好き

【からの】物語の構造をブチ破る「なろう系」の台頭は、帰ってくる価値が、現実から喪失したという、切ない事実の現れだ【異世界おじさん】

(※ドラえもんと、天空のエスカフローネと、千と千尋の神隠しと、幽遊白書のネタバレ有)

 

「なろう系」と呼ばれるジャンルをご存知だろうか。

 

なろう系とは - コトバンク

 

色々定義はあるのだろうが、今回の記事では

 

・冴えない日々を送る主人公が

・死亡により転生し

・現実世界ではありがたがられなかった

本来なら評価されるべきスキルを以て

転生先でチート生活を謳歌

 

こういった特徴を持つ作品のことを、「なろう系」と呼ばせて頂きたい。

 

テンプレ展開などが批判されることも多いが、私は大好きだ。

 

しかし、私は「なろう系」の、あることに気付いて

暗い気持ちになった。

 

よく揶揄されがちな、展開が陳腐なことではない。

それが気になるようなら、なろう系を好きにはならない。

 

私が暗い気持ちになったのは、

「なろう系」には、 

「行きて帰りし」物語の構造が

採用されていないことに対してだ。

 

聞き慣れない単語かもしれないので、

「行きて帰りし」物語の構造について説明させて頂く。


「行きて帰りし」物語の構造とは、

 

・主人公が元居た場所を旅立ち

・旅先で何らかの成果を得

・元居た場所に帰る

 

という物語の形のことだ。

 

この形を使った有名な作品に、スターウォーズが挙げられるので、スターウォーズを想像してもらえると、わかりやすいかもしれない。


スターウォーズを始め、人気作品はだいたいこの構造が取られる。

 

のび太は雲の王国から帰ってくるし、

ひとみはファーネリアから帰ってくるし、

千尋は油屋から帰ってくるし

幽助は魔界から帰ってきます。

 

 

 

 

 

帰ってこなかったとしても

主人公の心理として

「帰りたい」は基本的にあるわけです。

 

そのため、 

「帰るための方法探し」

「帰る方法が消えかけてひと騒動」

はエピソードに必ず組み込まれます。

 

ところが、「なろう系」の主人公は違います。

 

帰りたくなんて、ないのです。

 

「こんなことろに来ちゃった!」

「なんとかして帰らねば!」

「帰る方法がない!? えー!?」

 

という一連の展開がありません。

 

「なろう系」が新しく感じられるのは、

この描写がないことも大きな要因です。

 

古いタイプの漫画読みは、この展開がないことに、

ちょっとした肩透かしを、無意識で食らうはずです。

 

なぜ「なろう系」の主人公は、異世界に飛ばされて、元の世界へ

帰りたがらないのでしょうか。

異世界の居心地が、良すぎるのでしょうか。

 

それもあります。

 

ですが、今までの物語の構造でいくと、

異世界で感じた素晴らしさは別として、

元いた世界への未練も、描かれるのが常でした。

 

しかし「なろう系」の主人公たちは、違います。

 

元いた場所は

 

ブラック企業勤務だったり

家庭環境も恵まれていなかったり

友達がそもそもいなかったり

リア充至上主義な世界についていけてなくて不当な扱いを受ける立場だったりして

 

魅力を感じるられない世界です。

 

元いた場所には、絶望しかないんです。

 

ゆえに、選択肢として「帰りたい」が、そもそもない。

 

物語というものは、

漫画であれ映画であれドラマであれ、

若者に向けて作られます。

 

そして、その国における、若者の意見というのは

その国の意見と、イコールであったりするのです。

(ソース、オイラの大学の教授)

 

つまり、今のこの国の現実は

「行ったら、帰ってきたくないくらい、魅力がない」

 

ということになります。

 

でも、そりゃそうです。

 

若者が帰ってきたいと願うような

アドバンテージや努力の返報性が

この国にあると言えましょうか。

 

「ある」と即答できる人は相当恵まれています。

 

人々の切実で悲痛な現実への諦観が

物語の構造を変えてしまったのです。

 

物語は、人々の希望の象徴だったりもします。

シンデレラなどが、その役割を担っています。

 

そして現在、「行って帰ってこない」が、

人々の希望になってしまったのです。

 

それが、物語の構造の破壊となって

現れた。

 

私は「なろう系」は大好きですが、

「なろう系」が流行った背景を思うと

なんとも暗い気持ちになりました。

 

どうにか、この国が良くならないものか…。

それこそ、行ったら帰ってきたくなる、ような。

「なろう系」片手に、この国について考え、悲しみに耽溺しています。

 

「なろう系」の流れが変わるくらいに

現実の世界が、どうか良くなっていきますように…

 

かーらーの

 

異世界おじさん』ですよ

 

 『異世界おじさん』は、

「一度、異世界転生したおじさんが、現代に帰ってきて甥と過ごす

日常系ハイレベルギャグ漫画」

です。

 

おおおーーーーーーい!!!!

 

いたーーーー!!!

 

異世界に行って、帰ってきた主人公

いたーーーーーーーーーーーー!!!!!

 

まだまだ「行って帰ってくる物語」の構造は生きてるぞーーー!!!

 

「『異世界おじさん』の

おじさん一人が帰ってきただけで、

行って帰ってくる物語の構造が生きてると言い切るなんて

早計じゃない?」

 

「1作品の主人公が帰ってきたからといって

1ジャンルのことのように語ってしまっていいの?」

 

という疑問もあるかと思います。

 

しかし、

異世界おじさん』のおじさんは、おじさんだからこそ、

全ての「なろう系」主人公の未来の姿、

という見方ができる可能性があるのです。

 

少なくとも、「なろう系」主人公の

未来のうちの一つ、と言えそうではないでしょうか。

 

(若い「なろう系」主人公限定の世界線ですが。

少し前は、おっさん主人公が流行りましたので、おっさん主人公だと、この主張は成り立ちません)

 

異世界おじさん』は、

「なろう系」が築いた

「行って帰ってこない物語」

「行って帰ってくる物語」

にしてしまったのです。

 

「なろう系」というジャンル自体をひとつの物語とし、

その物語の先を描いたのが、『異世界おじさん』だと感じました。

 

異世界おじさん』の登場で、

「なろう系」は

「行って帰ってくる物語」になったのです。

 

そして私の仮説は覆ります。


若者は、物語に、行って帰ってこないという希望を見た。

 

しかし、異世界から、帰ってきたおじさんがいる。

 

このことは、「現実もまだまだ帰る価値がある」ということの

示唆ではないか。

 

人々が、まだ「現実」を求めている証拠ではないか。

帰るべき、帰ってくる価値があるべき、現実を捨てきれていないのではないか。

 

私は、『異世界おじさん』のレベルの高い笑いにはもちろん、

メタ視点でも明るい気持ちにしてもらえました。

 

異世界おじさん』には、物語の冒頭で、

現実に帰ってきてよかった、という描写はありません。

 

そのあたり、なろうの「別に現実に帰らなくてもいい」という流れを踏襲しています。

 

異世界から帰りたてなので、おじさんは無職から

現実の生活をスタートさせるのです。

 

「無職のおじさんなんて、どうすんだよ!」と

おじさんは持て余されます。

 

暗い現実世界と、リンクさせる描写になっています。

 

しかし、おじさんはある職を手に入れて

現実を生き抜くのです!

 

その職業でもって、おじさんは、現実を

存在する価値のある場所へと変えます。

 

さて、おじさんが就いた職業。 

それは

 

the You tuber

 

 

現実を「帰ってくる価値がある」ものと定義する

唯一の鎖がYou tubeなのかもしれません。

 


books.rakuten.co.jp

 

 

と、まとめようと思ったところで、

「現実はクソだ」という嘆きに

一石を投じる本に出会ってしまいました。

 

世の中を悲観するのは、そもそもちょっと違うようです。

世の中って、良くなっていってるらしいよ。

 

books.rakuten.co.jp

 

 

「なろう系」からの、『異世界おじさん』からの、ファクトフルネスで、

「この世界がイケてないから、こういう流れが出来た!」

の論法が崩れちゃったんだワン!

 

まあ個人としての、自分が要因じゃない不幸の

ひっかぶりによる悲劇、って、すごいあるし

別にそれは納得できてないけどね。

 

嘆いてもしょうがない、というのはわかります。

 

 

この記事は、作り手としてではなく、

「ただのめっちゃ漫画好きな人」として書いてます。

作り手視点とは別です。

 

なろう系に対して、「陳腐な展開と言われている」など、

揶揄するようなことを書きましたが

私自身がそう感じているかとは別の話です。

 

ググるとこういう説明が出てくるよ、

という程度のことに受け止めてください。

 

「陳腐とかいうなら、なろう展開、じゃあお前が描けや」と言われたら

それは不可能だからです。

 

自分ができないことを

私は批判しないようにしています。

 

特定のジャンルを揶揄したり、また決めつけたりするために書いた

文章ではございません。

異世界おじさんも、なろうも大好きです。

いち漫画好きが、ただ好きな作品について考えただけの文章です。

 

各著者様方におかれましては「そんなつもりで描いてねーよ」と

思われることと存じます。

いち漫画好きの消費者の戯言として流して頂けますと祝着至極です。

 

 

 

 

room.rakuten.co.jp